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将棋電王戦FINALのまとめ:阿久津八段とAWAKE開発者の葛藤とは

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将棋電王戦FINALの第五局。阿久津八段とAWAKEとの勝負はわずか21手で終わってしまうという、あっさりとした戦いでした。とても後味の悪い将棋だったと、見ていた方は思われたでしょうし、僕も開発者の巨瀬さんがいきなり「投了します」と言ったときは何かの間違いじゃないかと思ったほどです。

YouTubeのトップページが将棋動画ばかりなぐらい僕も将棋が好きですし、ファンとしてこの一戦はとても楽しみにしていたので少し残念ですが、阿久津八段もAWAKE開発者の巨瀬さんも、どちらも葛藤があったに違いありません。その点をまとめてみます。

投了までの道筋

どのような手となって投了したのかは以下を見てください。

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AWAKEが2八角を打った時点ですが、この後阿久津八段が1六香と動き、AWAKE開発者の巨瀬さんが投了したという形です。

この2八角がAWAKEの弱点と言われており、阿久津八段がこの手を誘ってくるのか?という点が見所で、まさにAWAKEに2八角を打たせたという形になりました。

2八角と打ってしまえば、AWAKEにとって角は、歩もしくは桂、あわよくば銀としか交換できないという悪手になってしまうのです。ここまでくれば先手の阿久津八段がかなり有利です。それを読んでAWAKE開発者の判断で「投了」となってしまったのですが、僕にはただの投了のようには見えませんでした。

AWAKEの弱点

AWAKEの弱点は先ほども言ったように『2八角』にあります。将棋電王戦では、棋士に一週間の時間が与えられ、ソフトウェアの攻略をしてよいとされています。これまでもソフトウェアを攻略してきたのですが、それでもプロは負けたりしましたね。ただ今回は特に、ソフトウェアの攻略に成功したと言えます。

阿久津八段はいつ気づいたのか

ソフトウェアを与えられて3,4日目に、このAWAKEの弱点に気づいたと記者の質問に答えていました。

しかし、この手は実際にアマチュアの方が事前に開発をした手でもあり、阿久津八段もいろいろな手を試した結果、この2八角が一番の最善手と考えたのでしょう。

質問では、ここで2八角を打たしても勝率が100%ではないと答えていました。ほぼ勝てるとは言っても、絶対に負けないとは言い切れない状況だとおっしゃっていました。だからこそ21手での試合終了には少し驚いたはずです。

開発者はいつ気づいたのか

2/28と3/1に、アマチュアの方が将棋電王のAWAKEにチャレンジできるという企画がありまして、2年ぶりにこのチャレンジに成功した方が現れました。 電王AWAKEに勝利し100万円ゲットした山口直哉さんの必勝法。△2八角を打たせる | 将棋ワンストップ・ニュース

ここでAWAKEに対する攻略法が発見され、開発者もAWAKEの弱点に初めて気づいたようです。まさにプロが指さないようなアマチュアの差し手に敗れてしまったのです。

事前インタビューから心境を読み取る

事前インタビューにおいて、AWAKE開発者の巨瀬さんは、「勝ちにはこだわらない。将棋界の技術向上に貢献できれば。」と答えており、これは阿久津さんへ「アマチュアが指すような手で攻略してくるのではなく、力と力でぶつかり合いたい」というメッセージだったと僕はとらえています。

実際に2八角を打ってしまっては、勝つ見込みがほぼ0になってしまうので、そういう攻略法を使うよりもプロとしての手で挑んで欲しいと願ったのでしょう。

しかし、その願いはむなしく、阿久津八段は2八角を誘導する手を指しました。

興行としての将棋か、勝負としての将棋か

阿久津八段は、勝率が高まる手を指しました。これは至って当たり前のことです。勝負をするからには、勝たないと意味がありません。

ただ、プロとしての仕事は勝負に勝つだけではなく、ファンを楽しませることも重要なことです。一応我々ファンも、2八角で攻略してくるかどうか?が今回の勝負の見所にもなっていましたし、その後の展開も楽しみにしていました。

そしてこの攻略法に怒りを覚えたのか、開発者はすぐに投了をしてしまったのです。攻略より、もっと力と力でぶつかりたかったというのが、巨瀬さんの正直な気持ちだったのでしょう。

しかしながら、スポンサーもついてファンも大勢見ている中で、楽しめる将棋を長時間にわたって見れなかったのも事実です。すぐの投了にはとてもがっかりしました。

ここに興行としての将棋と勝負としての将棋の葛藤がお互いにあったに違いありません。

団体戦という重み

今回の将棋電王戦FINALではソフトと棋士の5戦マッチでした。ここまで2勝ずつと拮抗した戦いになっていました。だからこそ阿久津八段も団体戦としての重みを感じ、勝ちへのこだわりが強くなったのでしょう。

AWAKEについては、事前に100%とは言わないものの弱点が知られた上での戦いだったので、開発者にとってはとても心境が苦しかったに違いないです。ソフトのプログラミングを変更することはルール上禁止されているので、弱点を突かれると思いながら約1ヶ月を送るというのも心苦しかったかもしれません。

まとめ

今回の後味の悪い戦いは、誰の責任でもないでしょう。ルール上開発をストップされている巨瀬さんの1ヶ月の心持ちと、プロ棋士として団体戦に挑んでいる阿久津八段の心境は比べることはできません。

ホームページに、電王戦とは 「棋士とコンピュータが戦う将棋棋戦です。現役のプロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが団体戦を行います。」と書かれています。

将棋電王戦のサブタイトルが「HUMAN VS COMPUTER」とあるように、コンピュータが人間に勝てる日が来るのか?というのがそもそもの関心だったと思います。そう考えれば、阿久津八段がコンピュータの癖を読み切って、開発者に投了させたことは、人間側の勝ちで終わったことを意味するのでめでたしめでたし...なのですが、複雑な心境です。

興行としての将棋と、勝負としての将棋。この葛藤がコンピュータとの勝負では避けられない部分ではありますし、今後はコンピュータ側のさらなる向上によって、棋士を完璧に打ち負かすまで成長してくれることを願うばかりです。

そういう環境が整って、人間界最強の羽生名人とコンピュータの勝負を見てみたいなとファンながら思ったりします。希望的観測にすぎませんが、そのような日に備えてコンピュータ側ももっと強くなって欲しいなと思います。

こういうジレンマや葛藤を生んでくれたこの最終対決は、ある意味将棋電王戦FINAの最後にふさわしい一局だったと思います。

では