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【書評】言葉にして伝える技術ーソムリエの表現力ー田崎真也

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本のタイトルにもあるように、

言葉にして伝える技術というのはどういうものなか。

 

自分たちが見たもの、聞いたもの、触れたもの

それぞれ言葉にして表現することができます。

それが抽象的な表現であったとしても。

空を見て「きれい!」とか

海を見て「青い!」とか

 

味や風味もそれと同じです。

おいしい!まずい!からい。しょっぱい。甘い。。。

 

しかしそれでは、本当の味を人には伝えることができないかもしれません。

 

 

ソムリエという仕事は確かにプロフェッショナルな仕事です。

人に言葉で、その実体のないものを伝えなければならないので。

 

そうした中で、バラエティ番組のレポーターの表現力には乏しいものがあると著者は訴えています。

「肉汁がじゅわっと広がる!」

「ぷりぷりした〜!」

「ほっこりした〜!」

「こくがあって、あっさりしている!」などなど

タレントの鈴木奈々で脳内再生してみて下さい。笑

 

これじゃどのような味がして風味が出ているのか分からない。わかりづらいと思います。

 

 

ソムリエは、どのような味をどのように表現するのかを形式化しています。共通言語による会話になっているのです。面白いことに、田崎氏の脳内波形を調べた所、テイスティングしている時は、言語野を司っている左脳の方が活発化していたらしいです。それだけ自分の頭の中にある言葉と自分が今味わっているものを照らし合わせて、適切なものを選び出しているのでしょう。。。すごい

 

 

凡人である私たちも常に味を意識して食べれば、自ずとそうした感覚は身につけられると著者は言いいます。ファーストフードなるものが主張しているように、現在の食は質を重視したものから"速さ"を重視したものに転換してきています。

 

昔は家族団欒で晩ご飯という決まりきった風景が見られたが、余裕の無くなった現代ではそういう風景が消えつつある。それがいいのか悪いのかは別として、私たちが食を味わうという経験は実際に少なくなっているのではないだろうか。

 

この味わうことが本当に良い事なのかを本の中ではもっと書いてほしかった。この部分が、著者の主張の根底にあるものではないだろうか。言葉にして伝える技術は本当に素晴らしいし、なかなかできるものでもない。でも、果たしてそれはなぜ必要なのか?ということが明らかにされていない。

 

 

さて、この本の少し残念なところを述べたが、それ以外にも本当にためになる事が書かれている。それは先入観に対する忠告である。

 

僕も、食と農漁業に関わる事を勉強しているので、とても面白く読ませて頂いた。

 

 

その前に食の基本事項として、安全と安心の区別をなかなかしていない人が多いかもしれない。おばあちゃんが作ったおはぎと、世界標準HACCP認定を受けた中国産のギョウザ。

 

実はこれ、一般消費者にとっては、前者が安心で、後者が安全なのだ。

 

安全=科学的根拠に基づいて、人体に害がないもの

安心=人体の影響の有無に関わらず、ためらいも無く食べる事が出来る心のゆとり

なのだ。

 

安全・安心とは、きちんと作業工程に菌などが入らないようにしっかりされていて、尚かつ消費者にも受け入れられている商品の事である。ギョウザ事件等があってから中国産のものは危険という認識がやや広まった時期があった。しかしあれは、事件であって、事故によるものではない。中国の向上は欧米にも受け入れてもらうために、徹底した安全基準に基づいて商品が作られている。これを勘違いして「中国産=安全でない=安心できない」というロジックを持っている人が多い。本当は「中国産=安全=安心」であるのに、「中国産=安全=不安」というロジックなのが現状だ。

 

話を戻して、著者は「オーガニック野菜=おいしい」という先入観にも警告をならしている。これには大賛成だ。オーガニック野菜で美味しいものはなかなか作る事ができない。また、ジャガイモであれば、虫がジャガイモを食べようとすることで、ジャガイモが虫を排除しようと毒を作り出す機構が備わっている。そんなものを人が食べたら、農薬を使ったものよりも人体に悪影響を及ぼす(大きい小さいは別として)。

 

にも関わらず、オーガニック=おいしいという勘違いがでてきてしまったのだ。

京野菜もしかり。京野菜の全てが美味しいような神話ができあがってきているが、今はそうでもなくなった。しかしブランドがあるので他のものより3倍以上の値がするのだ。いやはや、、、

新鮮=おいしい

無添加=安全

国産=おいしい

地産地消=素晴らしい

食料自給率=上げよう

どれも合ってるかもしれないが、間違っている場合もある。先入観というのは怖いものだ。

 

というわけで、こうした先入観をもって食べてはダメだよ!というのがこの本の言いたい事で、そして、五感を研ぎすませていこうよ。というのが本質なのだろう。

 

では!