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「学力」の経済学:科学的根拠で話す〜子どもを物で釣るのは良い?ゲームは好影響?〜

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学力の経済とは

子どもに対する教育というのはどの時代も等しく興味のあることです。今の日本において正しい子どもへの教育が普及しているかと言えばそうじゃないでしょう。東大に行かせたお母さんにあやかった教育法を試してみたり、テレビで芸能人が言っていたことを実践してみたり、、、などかなり経験則に基づいた話が多いと思います。


今回は「学力」の経済学の書評と題して、僕の私見を入れながら書いていきたいと思います。


そもそも子どもに学力なんて必要なの?どうして子どもにそこまで勉強させるのか?という大前提とも言える疑問を持つ親も少なからずいるかもしれません。勉強はさせなくても良いと考えるならば「学力の経済学」は不要の代物です。


学力は社会に与える影響であったり、非認知能力、収入など無視できない因子と言えますので、できれば全ての人に科学的根拠に基づいた学力の経済学は知ってもらいたいなと思っています。社会に与える影響とか、年収とかなんで考えるの?という価値観、哲学の話は無しでお願いしたいです><笑


子どもに対するご褒美

子どもを物で釣っても良いのか。。。親なら誰しも考えることでしょう。結論から言えば、子どもを物で釣るのは問題ありません!しかしそれにはいくつかの条件があります。


インプットに対してご褒美を

ご褒美の対象は「インプットに対して行うのが良い」というのが実験で得られた結果です。インプットとは宿題や、○時間の勉強と言った具体的にすべき中身が分かっているものです。逆にアウトプットとは「テストで100点」であったり、「読書感想文で金賞」などの成績などの結果に対するもので、これに対する報酬は効果があまりないことが分かりました。


インプットの学習は明確な目標が立てられているので、「○○をしたら報酬が貰える!」と直近の課題が分かっているのに対して、「テストでいい結果を出す」というのは、どのようなものを勉強すればよいのか?を考える必要があり、目の前の課題が不鮮明になります。


僕も算数のドリルを○○ページやったらワンピースのゲームを買ってね!と親と約束し、見事ゲームを買ってもらえました。こういう報酬は後で思い返すと良かったと思うのです。逆に、今度のテストで○位だったら○○してね!というのは効果が無いというか、どうせ無理と勝手に諦めて頑張る必要性が薄れてしまい、勉強もしなかったかもしれません。。。笑


年代でご褒美は分けるべき

実験では小学生までは「金」ではなく「物」をご褒美で上げるほうがコスパが良いという結果も出たのに対し、中高生以上にはお金をご褒美として上げるほうが有効であることが分かりました。小学生は選択の幅がまだ狭いので、お金を与えるよりも何か物で釣る方が効果的なんでしょう。


中高生以上だと与えられた物よりも自分が欲しい別の物と比較してしまいますから。


実験ではトロフィーを使ったみたいですが、日本だと妖怪ウォッチでしょうか。いや、もう古いか。笑 何にせよ、その時の子どもが喜ぶ輝かしい物を与えるのが一番だと思います。


子どもの興味を削いでしまわない?

ご褒美を与えると、子どもの内から出る興味を打ち消してしまわないか不安ですよね。子どもは報酬が欲しいから勉強する→勉強が作業のようになって、報酬が無ければ勉強をしないようになってしまわないか、、、これが一番の不安要素かもしれません。


しかしご褒美が「一生懸命勉強するのが楽しい」という子どもの内なる所から出る気持ちを失わせることはないという結論が出ています。これはひと安心できます。


常に目の前に人参をぶら下げるというのもやはり変な抵抗もありますが、子どもの内なる興味って計り知れませんから、いつか自分の興味のあることを見つけると思います。


あ、僕は高校生まで自分の興味のあることを見つけることができませんでした。笑



褒めれば勉強できるのか

むやみやたらに子どもを褒めると、実力の伴わないナルシストを育てることになりかねません。

グサッと心に刺さるのは、僕だけでしょうか。笑


「褒める=いいこと」だと勘違いしていたからこそ、僕はショックです。


褒めるという行為は、確かに褒美の一種ではありますが、間違ったものに対して褒めると「反省する機会を奪い、それでもいいんだという間違った自信を植え付ける」ことになりかねません。


本書では「頭がいいね」と「よくがんばったね」という声掛け1つの差でも明確な違いが出ていることを指摘しています。本当に言葉一つで子どもの受け取り方って違うんだな。。。って思います。これは大人になっても同じことなので、もし僕がそういう立場になったときは気をつけたいと思います。


ゲームは学力に悪影響?

スプラトゥーンの凄い所

任天堂WiiUゲーム「スプラトゥーン」が凄いなーと思うところに、シューティングゲームでありながら、それをポップなインクを用いていることにあります。水鉄砲なら親も公認しそうで、子どもに買い与えることのハードルを低くしているかのように思えます。


もしスプラトゥーンが実弾を使ったゲームだったらここまで普及していたのか、疑問に思います。縄張りを広げるという発想はインクがなければありえないので、実弾を例として上げるのはナンセンスかもしれませんが、シューティングゲームのイメージを覆した意味で、本当に凄いなと思うんです。


こういう点から、もし実弾を使ったゲームなら子どもに買い与えるのか?という命題を考えたいのですが、やっぱり暴力的なゲームって子どもにしてほしくないですよね。多くの親が同じようなことを思うでしょう。さて、科学的見解はいかに?


暴力的なゲームも影響はない?

実は暴力的なゲームであっても子どもの実生活には直接悪影響を与える有意的な結果が得られませんでした。つまり、「暴力的なゲームをやってるから子どもの犯行もひどくなっている!」というのは間違った見解だと思います。


本書でも書いてあるように

ゲームの中で暴力的な行為が行われていたとしても、それを学校や隣近所でやってやろうと考えるほど、子どもは愚かではないのです。


子どもの暴力などに対して「昔はそんなことはなかった!」と言う方もいますが、「メディアがこれだけ普及したからその様な行いが明るみに出やすくなった」というのが正しい見解だと思います。昔から子どもの犯罪はあったのですが、テレビで見ると周りでも普通に起きている事件だと錯覚してしまいますからね。気をつけたいところです。



ゲームは一定の範囲内なら問題ない

ちなみにゲームは過度にプレイしなければ問題がありません!!!良かったですね。笑


ただし、ゲームのし過ぎは負の影響がめちゃくちゃあるみたいです、やっぱり。ゲームのし過ぎは勉強時間が少なくなりますし、子どもの発達にも影響があるということで、やり過ぎは良くないです。


目安は1時間

ゲームの目安は1時間であり、2時間以上になると先ほど説明したように発達や学習に悪影響を及ぼすことも分かっています。


また、ゲームを根本的に辞めさせたら良いのかと言うとそれも違って、ゲームをやめさせても勉強時間は3分も増えないことが実験でわかりました。今の時代、ゲームだけでなくテレビやネットなど誘惑させるものはたくさんあるので、ゲームを没収しても意味がなさそうです。


しかし、もし僕の中高生時代にスマホがあってTwitterもあり、パソコンも1人1台に与えられていたのなら、本当に勉強していたのか疑問に思います・・・


非認知能力が学力に影響を与える

自制心を育てる

勉強は認知能力(学力テスト)の向上に寄与しますが、そのような環境は同時に「非認知能力」という社会性であったり意欲などを伸ばすことにも繋がることが分かっています。


有名なものにマシュマロ実験というものがあります。
マシュマロ実験 - Wikipedia


子どもの目の前にマシュマロを置いて、15分後食べていなかったらもう一個マシュマロを上げるよ!という実験です。この実験に成功した子どもは大学進学適性試験(SAT)で200点以上もの結果を出したという面白い追跡実験です。


SATは800点満点ですので、センター試験で置き換えて考えてもその凄さに驚くでしょう。自制心という、勉強とは関係のなさそうな因子がとても重要であることが分かると思います。この自制心は鍛えることが可能ということなので、小さい内から子どもに対する自制心の教育も重要なんだなと思いました。


やり抜く力

またもう一つの非認知能力として「やり抜く力」も取り上げられています。

ダッグワース准教授のTEDトークである「成功のカギはやり抜く力」という有名動画がありますが、「やり抜く力」も成功を予測できる性質の1つとして注目しています。


「才能があってもやり抜く力が無ければ意味が無い」
才能があり努力をも怠らないイチローを思い浮かべます。


非認知能力を伸ばすことが、学力にも良い影響を結果としてもたらすということが分かったと思います。あの人は頭も良くて、忍耐力もあり、社交的でパーフェクト!なんて思うことが多いのも、非認知能力が長けていてその結果学習能力も高くなっていると思えば納得しますね。


学力の経済学

今回のブログ記事は「学力」の経済学という中室牧子教授の本の書評として書いています。ちなみに、この他にも

  • 友達が学力に与える影響
  • 子どもへの教育投資はいつ"ドカン"と行うのが良いのか

などなど、かなり興味深い話がありました。
僕は偏差値70の高校に行きましたが、周りが凄すぎて落ちこぼれな成績でもある程度の国立には行けましたし、この「友達が与える影響」というのはとても無視できないと思っていました。そして中高一貫校が良いのもこうした友達の影響が絶対に存在すると思うのですが、さて科学的根拠が気になりますよね?


僕の中学校はヤバイ学校で、不良中学とも言われていました。笑 それでも受験でそれなりの成績が残せたのも、塾のおかげだったと思っています。塾に行けば僕以上に頭の良い奴ばかりで、幸いにも僕はそうした友達をたくさん持つことができました。


本書から子どもの進路を十分に考えることができると思います。


腐ったみかんの方程式

辛いことがあってあちこちぶつかっていれば、そりゃどこか腐ってくる。だが私たちはみかんを作ってるのではない、人間を作っている。人間の精神が腐るということは絶対ない。by金八先生

この前金八先生の特番があって、この腐ったみかん方程式のことを批判していました。腐ったみかん方程式を簡単に言うと、腐ったみかんがあれば回りのみかんまで悪影響を与えるところから来ていて、「行いが悪い子がクラスに1人でもいるとそれが周りにまで影響されてクラス全体が腐ってしまう」という意味です。


金八先生、あなたの言葉はとても美しいけど科学的に「腐ったみかん方程式」は"一部"正しいことが分かっています!!!すいません!!!



親の年収と学力

本書では親の学歴と年収が子どもに対する学歴にも影響を及ぼすデータがあると述べられていますが、そこは少し疑問があります。


東大の親の年収は1000万円とあり、2人以上の勤労者世帯の平均年収である623万円よりも高いということが言われていますが、そもそも子どもが東大に行く年齢は18歳〜です。男性の結婚する平均年齢は30歳以上ですので、大学に子どもを出す時には親の年齢は50歳前後です。


50歳前後は、一番年収が高い時期で、男性の平均年収は600万円以上もあります。共働きになると親の年収は1000万円を超えるので、東大に行かせてる親は高年収というよりも、大学に行かせてる親は高年収という見方のほうが正しいかもしれません。


これを正しく見るためには、東大の親の年収と他の大学の親の年収などを比較する必要があるでしょう。なので、親の年収が低いから、、、などと考える必要はないでしょうが、学歴に関してはゆるぎない事実となっています。


東大理Ⅲに三人行かせた母親

本書を読めば果たして"あの母親"が言っていることは本当に正しいのか、分かると思います。確かに独自の教育方針があってよいとは思いますが、それを一般化してよいかは別問題。


筆圧が学力に重要な影響を与える〜などと彼女の本には書いてあるようですが、もしかしたら正しいかもしれません。それと同時に字が綺麗だと勉強ができるという幻想もありますよね。


こういうのは1つの参考意見に留めておき、絶対的な意見だと思わないことが重要ですね。



「灘→東大理III」の3兄弟を育てた母が教える秀才の育て方 (角川書店単行本)



教育政策を充実させることの重要性

教育政策は日本では確かに未熟です。経済政策においては、大臣の個人的な見解なんてもってのほかですよね。どういう根拠でどのような政策を行っているのかは当然の話です。しかしながら教育の世界ではどうでしょう。普通に「こうであるべきだ論」が繰り返されています。

本書では他にも

  • 少人数学級は果たして良いのか
  • 子ども手当
  • 将来への投資としての国の教育の投資額
  • 教員の数問題。数ではなく質を上げるべき?
  • 教員研修は意味があるのか?笑
  • 教員免許は質を保証するのか

などについて書かれています。結構面白いです。今の政策に水をさすような中身もあって興味深いものばかりでした。笑


教員免許を持っていない塾の先生の方が質は良いんじゃないかと思えることもしばしば、、、、いや多々...笑


日本の教育投資におけるジレンマ

対GDP比の公的支出が毎年最下位の日本!なんていう記事も見られますが、GDP比の総教育支出を見ても日本は下位のグループに入っています。そして確かに公的支出で見ると日本は本当に最下位に位置しそうです...
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出典:OECD諸国との教育支出の比較から見る日本の教育課題/畠山勝太 - SYNODOS


今日本が投資すべきは新しい産業へもそうですが、まさに教育なのでは?と思います。経済政策を行う上でも重要な指標となる人口も減ってきているので、子どもをもっと増やすと同時に、その子ども達への投資額を増やすことも重要で、、、でもそれって可能でしょうか...


今の日本はご年配の方にたくさん投資されていますので、その回収が楽しみです!!!



まとめ

途中自分の感想も入り混じっており、科学的根拠に基づかない記述もありますが、ブログなので私見を混じえながら書きました。


ちなみに子どもの教育は自分一人の意見のみならず、パートナーの意見も尊重しなければならないでしょう。もし自分が「科学的に○○だから、こうしたほうが良いんじゃない?」と言えば(仮想的な)奥さんに「子どもをそんな実験みたいにしてなんか可愛そう...そういうのなんか嫌だ...」なんて言われるのは目に見えています。


なので、"科学的根拠に基づく教育"というのは、パートナーに気づかれないよう、もしくは同意の上で行うと良いかと思われます。僕は絶対に言わずに密かに行うでしょうね。笑


ということで、学力の経済学;みんなが御意見番になることなく、何らかの根拠を示しながら議論することが重要だと分かっていただければと思います。



また、相関関係と因果関係というのはよく混同しがちです。例えば、「お酒を飲んでいるお年寄りは長生きする」というのはどうでしょう。「お酒を飲むことで健康になり、長生きをする」という見方が因果関係ですが、「お酒を飲めるほど健康体だから長生きしている」というのが相関関係です。全ての物事を因果関係で見ると凄く誤った見方をしてしまいます。


本書の実験の内容であったり因果関係の話などは本の最後の方でも詳しく書いていますので、エビデンスベースド(科学的根拠)とは何か?を知りたい方はさらに深掘りできる内容になっています。


教育を科学的根拠に基いて見つめなおすいい機会になりました!



「学力」の経済学